第一章・総則
第一条 (目的)
この法律は、インターネット異性紹介事業を利用して児童を性交等の相手方となるように誘引する行為等を禁止するとともに、児童によるインターネット異性紹介事業の利用を防止するための措置等を定めることにより、インターネット異性紹介事業の利用に起因する児童買春その他の犯罪から児童を保護し、もって児童の健全な育成に資することを目的とする。
第二条 (定義)
この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 児童
十八歳に満たない者をいう。
二 インターネット異性紹介事業
異性交際(面識のない異性との交際をいう。以下同じ。)を希望する者(以下「異性交際希望者」という。)の求めに応じ、その異性交際に関する情報をインターネットを利用して公衆が閲覧することができる状態に置いてこれに伝達し、かつ、当該情報の伝達を受けた異性交際希望者が電子メールその他の電気通信(電気通信事業法(昭和五十九年法律第八十六号)第二条第一号に規定する電気通信をいう。以下同じ。)を利用して当該情報に係る異性交際希望者と相互に連絡することができるようにする役務を提供する事業をいう。
三 インターネット異性紹介事業者
インターネット異性紹介事業を行う者をいう。

第三条 (インターネット異性紹介事業者等の責務)
インターネット異性紹介事業者及びその行うインターネット異性紹介事業に必要な役務を提供する事業者は、児童の健全な育成に配慮するとともに、児童によるインターネット異性紹介事業の利用の防止に資するよう努めなければならない。
第四条 (保護者の責務)
児童の保護者(親権を行う者又は後見人をいう。)は、児童によるインターネット異性紹介事業の利用を防止するために必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

第五条 (国及び地方公共団体の責務)
一 国及び地方公共団体は、児童によるインターネット異性紹介事業の利用の防止に関する国民の理解を深めるための教育及び啓発に努めるとともに、児童によるインターネット異性紹介事業の利用の防止に資する技術の開発及び普及を推進するよう努めるものとする。
二 国及び地方公共団体は、事業者、国民又はこれらの者が組織する民間の団体が自発的に行うインターネット異性紹介事業に係る活動であって、児童の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止するためのものが促進されるよう必要な施策を講ずるものとする。
第二章・児童に係る誘引の規制
第六条
何人も、インターネット異性紹介事業を利用して、次に掲げる行為をしてはならない。
一 児童を性交等(性交若しくは性交類似行為をし、又は自己の性的好奇心を満たす目的で、他人の性器等(性器、肛門又は乳首をいう。以下同じ。)を触り、若しくは他人に自己の性器等を触らせることをいう。以下同じ。)の相手方となるように誘引すること。
二 人(児童を除く。)を児童との性交等の相手方となるように誘引すること。
三 対償を供与することを示して、児童を異性交際(性交等を除く。次号において同じ。)の相手方となるように誘引すること。
四 対償を受けることを示して、人を児童との異性交際の相手方となるように誘引すること。
第三章・児童による利用の防止
第七条 (利用の禁止の明示等)
1 インターネット異性紹介事業者は、その行うインターネット異性紹介事業について広告又は宣伝をするときは、国家公安委員会規則で定めるところにより、児童が当該インターネット異性紹介事業を利用してはならない旨を明らかにしなければならない。
2 前項に規定するもののほか、インターネット異性紹介事業者は、国家公安委員会規則で定めるところにより、その行うインターネット異性紹介事業を利用しようとする者に対し、児童がこれを利用してはならない旨を伝達しなければならない。

第八条 (児童でないことの確認)
インターネット異性紹介事業者は、次に掲げる場合は、国家公安委員会規則で定めるところにより、あらかじめ、これらの異性交際希望者が児童でないことを確認しなければならない。
ただし、第二号に掲げる場合にあっては、第一号に規定する異性交際希望者が当該インターネット異性紹介事業者の行う氏名、年齢その他の本人を特定する事項の確認(国家公安委員会規則で定める方法により行うものに限る。)を受けているときは、この限りでない。
一 異性交際希望者の求めに応じ、その異性交際に関する情報をインターネットを利用して公衆が閲覧することができる状態に置いて、これに伝達するとき。
二 他の異性交際希望者の求めに応じ、前号に規定する異性交際希望者からの異性交際に関する情報をインターネットを利用して公衆が閲覧することができる状態に置いて、当該他の異性交際希望者に伝達するとき。
三 前二号の規定によりその異性交際に関する情報の伝達を受けた他の異性交際希望者が、電子メールその他の電気通信を利用して、当該情報に係る第一号に規定する異性交際希望者と連絡することができるようにするとき。
四 第一号に規定する異性交際希望者が、電子メールその他の電気通信を利用して、第一号又は第二号の規定によりその異性交際に関する情報の伝達を受けた他の異性交際希望者と連絡することができるようにするとき。

第九条 (児童の健全な育成に障害を及ぼす行為の防止措置)
インターネット異性紹介事業者は、その行うインターネット異性紹介事業を利用して行われる第六条各号に掲げる行為その他の児童の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止するための措置を講ずるよう努めなければならない。

第十条 (是正命令)
都道府県公安委員会(以下「公安委員会」という。)は、インターネット異性紹介事業者が 第七条又は第八条の規定に違反していると認めるときは、当該インターネット異性紹介事業者に対し、当該違反を是正するために必要な措置をとるべきことを命ずることができる。

第十一条 (インターネット接続事業者の責務)
1 インターネットに接続する役務を提供する電気通信事業者は、その役務の利用者に対し、児童によるインターネット異性紹介事業の利用の防止に資するその役務に関する情報の提供を行うよう努めなければならない。
2 インターネットに接続する役務を提供する電気通信事業者は、児童によるインターネット異性紹介事業の利用の防止に資する技術の開発及び導入に努めなければならない。
第四章・雑則
第十二条 (報告の徴収)
公安委員会は、第七条、第八条及び第十条の規定の施行に必要な限度において、インターネット異性紹介事業者に対し、その行うインターネット異性紹介事業に関し報告を求めることができる。

第十三条
公安委員会は、第十条の規定による命令をしようとする場合において、当該命令に係るインターネット異性紹介事業者が特定できないときは、その行うインターネット異性紹介事業の用に供される電子計算機(以下「事業用電子計算機」という。)について、ドメイン名等(インターネットにおいて、個々の電子計算機を識別するために割り当てられる番号、記号若しくは文字の組合せ又は当該組合せに対応する文字、番号、記号その他の符号若しくはこれらの結合をいう。以下同じ。)を使用する権利を付与し、若しくは保有させ、若しくはドメイン名等を使用させている者又は事業用電子計算機を当該インターネット異性紹介事業者に使用させている者に対し、必要な事項の報告を求めることができる。

第十四条 (方面公安委員会への権限の委任)
第十条及び前二条に規定する道公安委員会の権限に属する事務は、政令で定めるところにより、方面公安委員会に委任することができる。

第十五条 (経過措置)
この法律の規定に基づき政令又は国家公安委員会規則を制定し、又は改廃する場合においては、それぞれ政令又は国家公安委員会規則で、その制定又は改廃に伴い合理的に必要とされる範囲内において、所要の経過措置(罰則に関する経過措置を含む。)を定めることができる。

第十六条 (国家公安委員会規則への委任)
この法律に定めるもののほか、この法律の実施のための手続その他この法律の施行に関し必要な事項は、国家公安委員会規則で定める。
第五章・罰則
第十七条
第十条の規定による命令に違反した者は、六月以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。

第十八条
第六条の規定に違反した者は、百万円以下の罰金に処する。

第十九条
第十二条の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者は、三十万円以下の罰金に処する。

第二十条
法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、第十七条又は前条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても、各本条の罰金刑を科する。
附則
第一条 (施行期日)
この法律は、公布の日から起算して三月を経過した日から施行する。
ただし、第七条、第八条、第十条、第十二条から第十四条まで、第十七条、第十九条及び第二十条の規定は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。

第二条 (検討)
政府は、第七条及び第八条の規定の施行後三年を経過した場合において、これらの規定の施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。

理 由
最近におけるインターネット異性紹介事業の利用に起因する児童買春その他の犯罪による児童の被害の実情にかんがみ、インターネット異性紹介事業を利用して児童を性交等の相手方となるように誘引する行為等を禁止するとともに、児童によるインターネット異性紹介事業の利用を防止するための措置等を定める必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。

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